※「プレイする気はありません」の若干のネタバレがあります。
あなたは学校へと続く道を歩いていきます。
しばらく進んでいくと、あたりには茨が見えてきました。
学校を、茨が取り囲んでいます。
あなたはこの物語がどんなものなのか、理解しました。
魔女に呪いをかけられ眠り続ける、あるお姫さまのお話です。
この学校に、その眠り姫がいるのでしょう。
物語が予定どおりに進行しないということは、まだ王子役がたどり着けていないのでしょうか。
周囲を見渡してみても、あなた以外の人影はありません。
学校の中で迷っているのかもしれません。
ヒーローをヒロインの元まで送り届ければ、物語はハッピーエンドへと向かうはずです。
あなたは学校の中へと入っていきました。
茨は学校内にまで入り込んでいます。
侵入者を拒む茨を、管理人としての力で排除していきながら、あなたはヒーローを探します。
けれど、校内を一周しても、それらしき人物は見つかりません。
まさかヒーローが役目を放り出してしまったのでしょうか。
そんなことになったら、新たなヒーローを作り出さなければいけなくなってしまいます。
姿を見せないヒーローに焦れたあなたは、とりあえずヒロインの様子を確認しにいくことにしました。
保健室、とプレートのある部屋に、ヒロインは眠っているはずです。
そこにしかベッドはないのですから。
茨を避けながら進み、あなたは保健室のドアを開きました。
「誰? もし彼女を起こしに来たんなら、悪いけど帰ってくれるかな。それは俺の役目だからね」
なんと、そこにはヒーローがいました。
彼はベッドの脇に座り、昏々と眠り続けるヒロインを見下ろしています。
ちょうど、ヒーローがヒロインを起こすその瞬間に乱入してしまったのでしょうか。
そうであれば、ただの邪魔者です。すぐに出て行かなければなりません。
失礼しました、と言ってあなたは保健室のドアを閉めました。
保健室の外で息をつき、それからふとあなたはあることに気づきました。
そもそも、あなたは正常に進行しない物語を、ハッピーエンドへと導くためにやってきたのです。
予定どおりに進んでいるのなら、あなたは今ここにはいません。
この物語には、何かしらあなたの介入が必要とされる理由があるはずなのです。
そう考えながらも、あなたは静かに待ちました。
もし、ただ単にタイミングの問題でしかなかったのなら、ヒーローがたどり着いている以上、すぐにでもこの物語は幕を閉じます。
しかし、待てども待てども、ハッピーエンドは訪れません。
やはり物語の進行を妨げる何かがあるようです。
あなたはもう一度、保健室のドアをカラカラと開きました。
そこには先ほどとまったく変わらぬ様子のヒロインとヒーローがいました。
訝しげな顔をするヒーローに、あなたは単刀直入に問いかけます。
ヒロインを目覚めさせないのか、と。
眠り姫を眠りから覚ますには、ヒーローがキスをするだけ。
それは、ヒーローもきちんとわかっているはずです。
この物語は、そういうストーリーなのですから。
「まだもう少し、眠っていてほしいんだ」
ヒーローはあなたの問いに、そう微笑みすら浮かべて答えました。
あなたには彼が何を考えているのかわかりません。
なぜ、すぐにヒロインを起こそうとしないのか。
もう少しとは、いったいどのくらいなのか。
わかったことと言えば、このままではヒロインはもうしばらく眠り続けることになる、ということだけでした。
なるほど、物語が予定どおりに進行しない原因は、ヒーローの意志にあるようです。
これは困りました。他でもないヒーローに、ヒロインを目覚めさせる気がないのです。
その気になってもらうためには、いったいどうすればいいのでしょう。
どうにかこの物語をハッピーエンドへと導くことはできないでしょうか。