「エステル・シュアクリールです。よろしくお願いします」
「ジルベルト・イーツミルグだよ。よろしく」
「ジルは、兄さまの幼なじみで友だちです。必然的にわたしとも幼なじみですね。性格は……一点集中型というか、興味や関心のあるものにだけ情熱を注ぐ、極端な人です。一途と言えば聞こえがいいですが」
「エステルは親友の妹で、僕の大切な唯一の人。僕を照らし導いてくれるひかりだよ。真面目でいつも冷静だけど、情に厚くて困っている人を放っておけない。その優しさに僕は救われたんだけどね。頭がかたくて、恋に不器用。あとは、そうだな、恥ずかしがり屋」
「いらない情報まで言わないでください!」
「エステルのことでいらない情報なんてないよ」
「ジルはわたしのことを美化しすぎだと思います」
「そのとおりだと思うよ。エステルは僕のことをよく理解してくれているね」
「わたしが二歳のときに、シュア家で、でしたよね」
「そうだよ。あれはアレクの誕生日だったね。僕がいつまでもエステルに会おうとしないから、しびれを切らされたんだ」
「二歳のときのことはほぼ覚えていないので、第一印象、とは違うかもしれませんが。幼児相手に日常的に口説くものだから、変態、と思ってました」
「星のひかりだ、と思ったよ」
「変態という印象は実のところ変わっていませんね。そんなところも含めてジルだと思っています」
「今も変わらず、エステルは僕のひかりだ」
「どっちが先かと言われると、ジルですよね」
「そうだね。数えきれないくらい告白しているから、どれの話をすればいいのかわからないけど」
「付き合うきっかけになった告白、ということなら……わたしから、になるんでしょうか」
「あれはうれしかったな」
「忘れてください……いえ、忘れられても困るんですが」
「いつも気持ち悪がっていました。最初のほうは本気だとも思っていなかったので、冗談はやめてください、という感じに答えてましたね」
「エステルに名前を呼んでもらえたときは、これ以上ないくらいにしあわせで、もし夢だったらどうしようと恐ろしく思ったよ」
「わたしを“ひかり”だと言ってくれるのは、恥ずかしいですがすごくうれしいです」
「どんな言葉でもエステルからもらえるものならうれしいけれど、素直に好意を伝えてくれるとこの上なくしあわせだね。あとは、名前を呼んでもらえる瞬間が好きかな」
「今は公認になりましたね。婚約しましたから」
「三ヶ月ほど、非公認だったけどね」
「わたしを誰よりも強く好きでいてくれるところです」
「僕の感情を揺り動かすところ。僕に世界の優しさを、美しさを教えてくれるところ」
「ジルは少し排他的なところがあります。嫌いというか、心配になるところですが」
「誰にでも優しいから、すぐ不安になるよ。どうあっても嫌いにはなれないけどね」
「誰にでも優しくなんてないですよ。ちゃんと優しくする相手は選んでます」
「選んでてあれなら、余計に不安なんだけど」
「……ちゃんと、ジルが特別ですよ」
「うん、ありがとう。僕のエステルへの想いは一生変わらないよ。心配してくれるのもうれしい」
「ずっとわたしのことを好きでいてください」
「もちろん。ずっとエステルの傍にいさせてね」
「……どこも何も、まだ一回しかデートしてないんですが」
「そうだね。僕がエステルの家に会いに行くのは、ある意味ではデートかもしれないけど」
「それなら庭に出るのが多いですよね。花を見るのは大好きです」
「落ち着いたら、いろんなところに連れていってあげたいな」
「ラニアには自然と食べ物屋さんくらいしかありませんけどね」
「……庭まで、とかボケちゃダメですか」
「おそらく期待されているのはそういう答えじゃないと思うよ」
「わかってますよ、それくらい!」
「エステルが過剰反応しているけど、まだキスまでだよ。エステルも成人したばかりだしね」
「正直に答えなくても……」
「そういう趣旨の質問なんだから、あきらめようか」
「……楽しんでますね、ジル」
「あ、ばれた?」
「仕草というと少し違うかもしれませんが、ジルの触れ方が好きです。宝物に触れるみたいに、優しいから」
「エステルの仕草ならなんでも好きだけどね。あえてあげるなら、照れてうつむくときや、そのまま見上げてきて上目遣いになるところなんかが、かわいいね」
「ジルの愛の言葉の甘さには一生勝てそうにありません」
「僕はエステルに負けっぱなしだよ。これからもきっとね」
「そうなんですか?」
「先に惚れたほうの負け、って言うしね」
「……」
「愛し合っているよね?」
「そ、そうです、ね」
「恥ずかしがらなくてもいいのに」
「これからもよろしくお願いしますね、ジル……ジルベルト」
「愛しているよ、エステル。僕の星のひかり」