アマゾナイト

 相変わらずきれいな顔をしているなぁ、と正面にいるジルを観察していたら、ふと閃いた。

「ジルの瞳の色は、石にたとえるならアマゾナイトでしょうか」
「アマゾナイト?」
「はい。アクアマリンだと薄すぎるし、エメラルドほど緑じゃないですから。ヒスイも近いような気もしますけど」

 ジルは宝石にあんまり詳しくないんだろうか。
 まあ、アマゾナイトは宝石というより輝石だよね。硬度は低くなかったはずだけど。
 パワーストーンとしてもあんまりぱっとしなかったような気がする。不透明だったからかな。
 アクアマリンとかエメラルドはすごく人気が高かった。宝石としても人気だし、当たり前なのかも。
 ジルの瞳はどっちつかずな色だから、光の加減でも見え方が変わって、表現しにくい。
 青みの強いエメラルドにも見えなくはない……のかな。どうだろう。

「アマゾナイトは和名がきれいだったんですよね。ああ、どうして漢字を書けないんだろう……!」
「異世界の言葉を輸入するわけにいかないからじゃないかな」

 世界の理とかってやつですか、そうですか。
 日本語を話せないのもそういう理由なのかな、やっぱり。
 まあ、今はそんなことどうでもいいんだけどね。

「あとは……アマゾナイトといえばストレス軽減の効果があるんですよね。わたしのストレス軽減に手伝ってくれますか?」
「僕にできることなら」

 なんとなく思いつきで言葉にすると、予想よりも食いつきがよかった。
 なんですか、親切週間か何かですか。
 じゃあ、遠慮なく言わせてもらいます。

「金輪際わたしを口説かないでください」
「無理だね」

 にっこり笑顔でわたしが言うと、ジルもにっこりと笑って返してくる。

「即答ですか」

 くっそう。もう少し考えたっていいじゃないか。
 だいたいわたしは子どもだよ?
 子どもを口説いたって変態扱いされるだけで、いいことないよ?

「できない約束は最初からしないほうが優しさだよね」
「ポジティブすぎる……さすがアマゾナイト……!」
「エステルはこじつけがすぎると思うよ」

 そんなことありません。
 と、わたしはとぼけておくことにした。






和名:天河石
石言葉:穏やかな心・聖なる愛情、など

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