アメジスト

 兄さまとお茶しているとき、ふとわたしは閃いた。

「兄さまの瞳の色は宝石にたとえるならアメジストですね!」
「……おまえも同じ色だろう」

 唐突なわたしの言葉に、兄さまは呆れたように言う。

「いいえ、違います。くず石と磨き上げられた宝石ほどに違います!」

 同じアメジストだとしても、全然違う。
 兄さまの瞳は知的な光が宿っていて、すごくきれいだ。
 暗くも見られそうな紫なのに、人間的な熱も垣間見えて、それが兄さまの魅力を増している。
 兄さまのことなら任せてください! いくらだって褒められます!

「そんなことはないだろう」

 兄さまは少しむっとしたようだ。
 わたしが自分のことを卑下しているように聞こえちゃったのかな。
 そうじゃない。単に比較対象が良すぎただけだ。

「わたしの瞳のことはいいんです。今は兄さまの瞳の色のことです」
「アメジストがどうした」

 ちゃんと話を聞いてくれる気でいるらしい。
 やっぱりなんだかんだ言って面倒見がいいよね、兄さま。大好きです。

「アメジストって浄化作用がすごく強いんですよね。たしかに兄さまといると悪いものが寄ってこなさそうです」

 魔除けのパワーが強いだとか、ネガティブな気持ちを一変してくれるだとか。
 影響力が強すぎるから、意思が弱い人が持つと危険、とかも聞いたことあった気がする。
 わたしはアクセサリー選びの参考にはしたけど、狂信的に信じてたわけじゃないから、好きなのを選べばいいじゃんって感じだったけど。

「パワーストーンか。そういう効果はこちらの世界でも同じだったか?」
「はい。調べてみたところ、覚えてるかぎりではほとんど一緒です。花言葉もそうですけど、前世で一時期はまってたんですよね」

 所変わっても考えることは同じなのかな。
 色による感じ方だとかが一緒だからなのかもしれないけど、偶然にしてはできすぎてるよね。
 まあ、暦がまったく一緒って時点で今さらかな。

「そうか。興味のあることを調べるのはいいことだ」
「兄さま真面目。そんなところも冷静な判断能力を高めるアメジストっぽいです!」
「……こじつけじゃないか?」

 そんなことないですよ!
 ……とは、言い返せない自分がいた。






和名:紫水晶
石言葉:誠実・真実・情熱、など

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