「晴巳のキャラ真似って、もう癖だよねぇ」
くすくす、と私はこらえきれない笑みをこぼす。
自分の言葉で、なんて格好つけていたはずの晴巳は、やっぱり会うたび何かしらのキャラの真似をする。今もそう。
記憶にある限り、小学生くらいのときからそうだったんだから、一生直らないんじゃないだろうか。
笑い転げる私を横目に、晴巳はこれみよがしにため息をついた。
「ああ怖い怖い、俺をその道に引きずり込んだ張本人が無自覚だなんて」
「何それ?」
私が首をかしげると、晴巳は複雑そうな微笑みを浮かべた。
「気づいてなかったんだ。俺が真似するキャラって、いっつも和佳の好きなキャラだよ」
そういえば、思い返してみればそうかもしれない。
ゲーム自体にハマるタイプとはいえど、どのゲームにだって好きなキャラの一人や二人はできる。
主命で圧し切るの人とか、六本の刀でレッツパーリィする人とか、分岐を失敗すると壮絶な死に方をする某アホ神子とか。
他にもたくさんたくさんいるけど、うん、たしかに。晴巳が今まで真似してきたキャラとぴったり一致する。
「最初はフカシギダネだったかな。プリルとかトゲビーとかもそうか。我ながらがんばったよなぁ」
「そんな昔のこと言われたって……」
懐かしい、懐かしすぎる。
あのころはまだ積極的にゲームをプレイすることはなくて、晴巳がやってるのを後ろから覗きこんでたりしたなぁ。
晴巳の鳴き真似は迫真の演技だった。芸の一つに数えてもいいんじゃないかってくらいだ。
「俺がモノマネすると、和佳は必ず笑ったんだ。泣いてても落ち込んでても、ケンカしてるときだって」
「そうだっけ!?」
「そうなんですよ。だから俺も味をしめちゃったわけ」
え、そんなの知らない!
子どものころは単純に好きなモンスターとかキャラみたいでうれしかったし、ある程度大きくなってからも妙に似てるモノマネは楽しくもあったけど。
毎回? 必ず? そんなの自分で覚えているわけがない。
「今だってやっぱり和佳は笑ってくれる。そしたら、笑顔見たさにキャラ真似したくもなるってもんでしょ?」
優しいまなざしを注がれて、じわじわと頬が熱くなっていく。
……そうだね、今も笑っちゃったところでした。
晴巳のキャラ真似のルーツが私にあったなんて、びっくり。
びっくりなだけじゃなくて、うれしいって思っちゃうのが、悔しいところだ。
でも、晴巳はわかっていないんだなぁ。
きっと、私がいつも笑顔になるのは、好きなキャラだからじゃない。
それが晴巳だからなんだって。
今はまだ、言える勇気はないけれど。
いつか、私の気持ちを全部、伝えられる日が来たら。
そのときは、ちゃんと晴巳の言葉で応えてくれることを、こっそり願っておきましょうか。